データセンターの整然としたサーバーではなく、世界中の参加 PC を束ねて計算資源にする。SaladCloud は community-sourced の CPU と GPU 上で Docker container を動かす分散基盤である。画像や動画の完成アプリではなく、自分のモデルと処理を container に詰めて走らせる場所だ。固定された AI モデルを選ぶのではなく、持ち込んだ workload を多数の node へ配る。
運営は米国の Salad Technologies, Inc. で、2018年に法人化され、Alpha、MVP、資金調達を経て2023年に事業者向け SaladCloud を始めた。Container Engine、Transcription API、Gateway Service、Virtual Kubelet、Container Registry、Job Queues などを持つ。AWS SQS、GCP Pub/Sub、S3、Cloudflare R2、Redis、Kafka、RabbitMQ、Tailscale、KEDA とつなぐ例もある。
使う場面は、生成 API の worker を複数台へ配りたいとき、画像や動画の batch を job queue から流したいとき、Kubernetes から外部の分散 GPU を使いたいときだ。LLM、画像・動画生成、文字起こし、computer vision などが用途に挙がる。利用者向けは Web portal と API/SDK で、Windows アプリは計算資源を貸す Chef 側のものだ。node の在庫、起動時間、中断頻度、実際の生成速度は触っていないため測れなかった。
強みは、instance が running の間だけ秒単位で課金し、cold boot、割り当て、download の時間は数えないことだ。GPU の最低 priority 料金には8GB RAM と4 vCPU が含まれる。Bring-your-own container なので固定モデルの追加や廃止を待たず、自分で環境を固められる。50以上の GPU instances には volume discount がある。反面、安い priority の node は interruptible で、予告なく止まる場合がある。再開や job の冪等性まで自分で設計する必要がある。
無料枠は製品ごとに違う。Container Engine に free trial はなく、Transcription API は organization 作成時に音声5時間の trial が自動付与される。画像や動画生成用の無料 GPU 時間はない。前払い credits を購入し、残高から実行量が引かれる。credits は購入から12か月で失効し、organization 間を移せず、購入は最終扱いとなる。残高の Auto Recharge を有効にすると、設定した閾値で自動補充される。
GPU は RTX 3070 8GB から RTX 5090 32GB まで料金表に並び、一般 CPU、CPU optimized、memory optimized の構成もある。年払いの定額プランではなく、秒単位の従量制である。税、カード銘柄、暗号資産、日本発行カード、日本からの決済可否は確認できなかった。残高不足ではサービスが停止する場合があり、completed job queue の job は24時間後に削除される。
弱点の第一は、Container Engine を無料で試せないことだ。container がその環境で起動するかを見る段階から credits が必要になる。第二は日本語で、日本語ページ、日本語 UI、日本円請求を確認できない。生成結果の言語は持ち込むモデル次第だが、運用画面と文書は英語前提である。さらに community-sourced PC を通るため、宛先 IP などが中間機器から見える可能性があり、厳しい規制や機密要件を持つ workload には適さない場合がある。
トップページは consumer network の最大 VRAM を24GB とする一方、2026年9月3日の料金表には RTX 5090 32GB が載る。どちらが実在庫の上限かは画面で確認が必要だ。汎用 container 基盤で顔交換や衣服除去を製品機能には掲げないため、real_person_risk は unknown とした。違法、児童搾取、なりすまし、無断の個人情報収集などは禁止される。
向いているのは、Docker と queue を扱え、中断を前提に batch 処理を組める人だ。常時稼働の単一 GPU、機密データ、日本語だけの管理画面を求める人には合いにくい。最初は小さな container と1件の job を用意し、最小 GPU で起動、停止、ログ、削除、課金秒数を見る。Auto Recharge は切ったまま始め、実際の消費を確認してから上限を決めるのが安全である。


